枡野浩一「結婚失格」
結婚失格 枡野 浩一 講談社 2006-10-31 asin:4062137062 Amazonで詳しく見る |
誠実なるAV映画監督が、人気脚本家の妻からいきなり拒絶されてしまう。明らかな妻の虚言、それをうのみにし、事態に拍車をかける妻側の弁護士。夫は子供に会いたい一心ではたらきかけを続けるが…離婚までの苦しい歩みを当時読んだ本の書評とともに綴る表題作ほか、ひりひりと胸に痛い愛と生の短歌「愛について」、虚実の境をつまびらかにする「あとがき」、穂村弘・長嶋有との競&共作(?)「真夜中のロデオボーイ」を収録する。
著者のファンならとっくに既読だろうこの本を、私は刊行から3ヶ月も経ってようやく購入した。ああ!なぜもっと早く読まなかったのであろうか!自分の注目新刊アンテナの低さには絶望したくなる。
著者の事実をありのまま…細かい設定は現実と変われど、登場人物の本質的な部分は変えずに描写する、そのやり方は非常にフェアだと感じる。
小説には、たくさんのWHY?がつまっている。自分は悪くないのに、避けられた。なぜ。嘘がまかり通っている。なぜ。法的権利が守られない。なぜ。そこには、正しいことが正しく認められない悲しみが満ちている。
とてつもなくつらい日々、だが絶望だけではない。きちんと彼の正しさを見てとって、支持する人もある。そして、人は悲しみだけに生きてはいかれない。仕事をし、食事をし、本を読み。日々ちゃんと暮らしていくことの尊さを思った。正直者は正直ゆえに時にはうとまれるが、その純真なまでの不器用さゆえに愛されるのだと思う。