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読書の記録

上橋菜穂子「獣の奏者」上・下

獣の奏者 I 闘蛇編獣の奏者 I 闘蛇編
上橋 菜穂子

講談社 2006-11-21
asin:4062137003

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獣の奏者 II 王獣編獣の奏者 II 王獣編
上橋 菜穂子

講談社 2006-11-21
asin:4062137011

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さすらいの霧の民と闘蛇衆の一族との間に生まれたエリンは、王獣という強く美しい生き物に魅せられるが、いにしえの掟と人々の欲望に翻弄されていく…。

 ファンタジーだが、人と動物の絆を描く生物飼育小説としてたいへんに面白かった。動物は人ではない生き物なのだから、人の価値観で動物の気持ちを推し量ることは出来ない。だが両者の間に、確かに愛とも呼ぶべき絆は存在する…そんなことが、リアルに描かれている。
 欲を言えば、エリンの淡い恋その後を読みたかったりとか、エリンと祖父の再会はあるのかとか、二大勢力の対立構図がシンプルすぎやしないかとか不満もちょっとはある。だが何よりも、異種族間の無償の愛が素晴らしかった。大人でも充分楽しめるが、十代の年若い人々に広く読まれてほしい、心浮き立つ本である。政治に巻き込まれるシーンはつらくもあるが、ヒロインが自ら考え選びとった道を切り開く姿は感動的だった。

p.s.王獣飼育のくだりは人に育てられたシロクマ・ピース「シロクマ・ピース」と飼育係高市さんを連想した。思わぬ怪我をしてしまうところも。
また、闘蛇も王獣もどことなく龍っぽいので「エラゴンエラゴン 遺志を継ぐ者―ドラゴンライダー〈1〉の主人公とサフィラの絆ががツボだったドラゴン好きにも強力にプッシュしたい。