読書日記PNU屋

読書の記録

恩田陸「中庭の出来事」

中庭の出来事中庭の出来事
恩田 陸

新潮社 2006-11-29
asin:410397107X

Amazonで詳しく見る


 毒死した男、烏と彼岸花、衆人環視の中ひっそり死んだ少女、劇と女優…彼らが織り成す謎と魅惑の世界に、読者は否応なしに引き込まれていく。

 恩田陸の小説を読むと、いつも不安にかられるのは何故だろう。
 本作では「内側」と「外側」の中庭で起きる出来事が並行し時には交錯して、読者を迷宮にいざなう。小出しにされる情報を解釈し、読者は不安におののきながら自分の立ち位置を探っていかねばならない。霧の中のごとく先が読めない、そこが恩田作品の醍醐味なのだから。
 今回はオチがなければゆるせないタイプにも安心な作りで、けむに巻くだけで終わらず合理的解釈もつくので、普通のミステリー・ファンにもとっつきやすいのではないだろうか。
黒と茶の幻想黒と茶の幻想 (上)etc.でも見られた、恩田作品の最たる魅力である不思議な小話も健在。解かれる謎と解かれない謎があり、一読したら一生忘れられないかもしれない。