越谷オサム「階段途中のビッグノイズ」
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かつての黄金時代を過ぎて、田高軽音学部は存続の危機に瀕していた。しかし、そこに音楽を愛する若者達が立ち上がった。ストレートな青春とバンドの物語。
ハートフルなゴーストストーリー「ボーナス・トラック」でデビューした著者の二作目。やはりこの著者の小説はいいなあ。きれいごとでないあたたかさに満ちている。
展開は王道一直線ではあるのだが、彼らがあまりに真剣で可愛いので素直に応援したくなってしまう。私は残念ながら洋楽に詳しくないので、作中の曲が半分もわからないのだが、わかるともっと楽しさが増すかもしれない。音楽、そしてバンドの楽しさがいきいきと描写されていて快い。贅沢を言えば歌詞だけでなく、ギターやベース、ドラムの音描写も欲しかったかな。
p.s.同じく高校時代の音楽系部活を題材とした小説に津原泰水「ブラバン」があるが、大人の事情が絡まない分こちらの方が爽やかさは上だろう。まるでおとぎ話のように善人ばかり出て来るところは甘さを感じてややマイナスではあるが、部員を一人一人集めていく様は「南総里見八犬伝」の戦士を揃えるのにも似た興奮があった。