読書日記PNU屋

読書の記録

長坂秀佳「私の胸には蝮が宿り 鷹丘城悲恋」

amazonで見る



作家・城研九四郎は小説の取材で訪れた陸奥で清楚な美女と出会う。その後、名家で巻き起こる連続殺人。彼女の容疑を晴らそうと奮闘する作家だが…。


いや、もったいない作品だ。惜しげなく奮発されるトリックといい、クラシカルな本格ムードといい、真面目にかっちりと作られた推理小説なのだが、キャラ設定のせいか軽薄な印象を与えてしまうのだ。ラノベちっくでライトな読み味と古典的な旧家の連続殺人というモチーフのミスマッチを狙ったのだろうか。だとしたら、あまり成功しているとは思えない。
容疑者筆頭の令嬢は無実か真犯人なのか、「氷の微笑氷の微笑的なところが見所だと思うのだが、同性である私の目から見てこのおじょーさんに全然魅力を感じられず、だのに主人公たる作家探偵は彼女にめろめろで、少しでも彼女に嫌疑がかかろうものなら脊髄反射で騒ぎたてるので、ちっとも共感出来ないのだ。
ここら辺は読者の好みによると思うのだが、主人公にも彼の想い人にも同情出来なかったため、もりこまれたミステリ的趣向を楽しみきれず、どこかシラケモードで読み終えてしまったというのが私の心境。

彼岸花オンライン書店ビーケーワン:彼岸花シリーズとかぶるキャラも出てくるので(菜つみ→菜々など)ゲーム感覚で気楽に読めばよかったのかしらん。
空山基によるカバー画は素晴らしかった。


p.s.最初「私の胸」ではなく「私の腹」だと思い込んでいた。ムネとハラじゃあ大違い〜。おかしいなあ太宰は過ぎ去りし十代のころよく読んだのになあ。