西尾維新「化物語」(上)
男子高校生・阿良々木暦は同級生の儚げな美少女・戦場ヶ原ひたぎの
秘密を知ってしまう。彼女はありえないくらい体重が軽かったのだ…
「ひたぎクラブ」「まよいマイマイ」「するがモンキー」の三編を収録する
妖怪格闘漫才萌え青春小説。
い、違和感が。戯言シリーズじゃないから当たり前だが、女の子が
「ちゃん」付けで呼ばれないし、主人公は戯言遣いではなく
素人漫才師モドキ(ツッコミ担当)である。
各章ごとに現れる様々なタイプの美少女と、ボケツッコミプレイが
楽しめるという新たなギャルゲー系小説とも読めるだろう。
しかも仄めかされるだけであからさまなエロはなし。
ギャルゲーってなんだ、オトせば終わりってむなしくないか、
と常々思っていた私には、本作の展開は今のところ好ましい。
カラダではなく、主人公はヒロインの心をオトしていくからだ。
ステディでもその進度ではちと可哀想な気もするが、本来高校生なら
こんなもんだろ。つうかこうあるべきだろ。
肝心のストーリーはというと、実に王道の怪奇ものなのである。
プロットだけ見れば古臭くすら思えるが、そこを魅力的な
美少女…ツンデレメンヘルのオマケつき、などのスパイスを加え
ベタな話を今風の萌えキャラでリミックスしてみせる様がまさに
西尾小説。
戯言シリーズのいーちゃんがはっきりしないやつ、
りすかのキズタカがハッキリイヤなやつだったのに対し、
アララギはバカがつくほどまっすぐでいいやつだ。
そんな彼がちょっとゆがんだモテ方をするところは、オタクハートを
つかむのではないだろうか。
名前への尋常でない凝りようも健在で、西尾ファンならば楽しめる
エンタメ作品だろう。