読書日記PNU屋

読書の記録

笙野頼子「一、二、三、死、今日を生きよう!一成田参拝」


神社と猫と論争と。
「成田参拝」
成田空港が今の姿になるまでには、政府側と現地農民の闘いの歴史があった。
文学者の見る成田とは。
私は生まれてこのかた日本から出たことがなく、成田空港には行った
ことがない。だからその歴史についても何となくしか知らなかった。
引用から国家権力の凄まじさを知り、多数の利益は少数派を力で排斥する
ことを知った。
具体的な描写から、いきなり悪夢のごときファンタスティックな描写に
転じると私には理解が難しくなった。何かの難解なメタファなんだろうか。


「一、二、三、死、今日を生きよう!」
愛猫モイラの死後、立ち直ったかのように見えた作家につきまとう
死ぬ日の概念。
怪異までもがリアルに書かれているがオカルトではなく、
作家本人の中でそれら全ては論理的につながっているようだ。
感覚としてはわかりそうだが、やはり難解。共感覚のような描写もある。
あと数編の幻視者的私小説が収録されているが、それらはいずれも難解で、
笙野小説は本作単品では一つの断片なのであり、時系列順に読んで
いかなければ作中世界に対する理解が覚束ないと感じた。