竹本健治「ウロボロスの純正音律」
装丁・京極夏彦 with FISCO、装画・喜国雅彦という豪華な一冊!!
実は私、シリーズ前作にあたる「ウロボロスの偽書」も
同「基礎論」も未読のまま、
いきなり本書を読んでしまったのだった。
事件自体は本書のみでも意の通じる独立したものであるが、
これでは「あとがき」の意味がとんとわからない。
並みならぬ仕掛けも施されていることだし、やはり理想としては
刊行順に読むべきであろう。
また囲碁趣味も濃厚に出て来るので、囲碁のワカル読者ならば
もっと楽しめるであろうことは想像に難くない。
読み終えて正直に思うことは(3部作の3冊目からという
反則的読み方をした私という読者の責任もあるが)なんとまあ、
難解な蘊蓄の膨大さに音を上げてしまったし、
真相には脱力のあまり呆然としてしまった。
なぜあんな魅力的な人物がそんな理由で物語から退場しなければ
ならなかったのか、キリキリしてしまう。
殺人直後に和やかに推理談義をしたりとか、
殺人現場を仕事場として通い続けるなどミステリーマニアの
業と言えばそれまでだが感覚的についていけないところも多かった。
私のようにK館も未読のナンパなミステリーファンには荷が重い本だが、
本書最大の魅力は実在するミステリー作家・漫画家・編集者など
ミステリ界隈の人が登場すること。作中で制作されている漫画本が実在し、
制作過程もリアルなので
【おお!このマルチーズはあの大先生が描かれたのか!】
などと舞台裏がわかって興味深い。
楽しみ方が多方面にわたる本であることは論を待たないだろう。