三津田信三「凶鳥の如き忌むもの」
怪奇に目のない刀城言耶が出会った孤島の人間消失事件。
「厭魅の如き憑くもの」でも活躍した小説家探偵が事件に挑む。
ホラーとミステリーの境界をたゆたう作品ながら、
豊富な民俗学的蘊蓄と理屈の応酬があるので読みやすくはない。
頭に自信ある読者なら正解に難なくたどりつけると思うが、
私個人の考えではあのトリックは実行不可能であると思う
(×蓋の中身はどうしたのだ？×球はともかくそこまで×が×せる
はずがないし、証拠保全に持ち運んでいるのだから持てば
おかしいとわかるはず)。
前作「厭魅〜」のごとき濃厚な怪奇風味はなく(共潜きは面白かったが
前作のごとき、挿話を良質なホラー掌編として楽しめるような趣向は
今回はなかった)、そこが残念であった。
