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読書の記録

増田明利「今日、ホームレスになった 13のサラリーマン転落人生」

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一流企業、会社社長だった彼らは何故路上生活者になったのか。13人にインタビューしていくノンフィクション。
人は誰でも一冊の本に出来るほどのドラマを持っている、とはよく聞くフレーズだが、私が本書から感じたことはまさにそれだった。一つ共通しているのは、ホームレスになりたくてなった人はいないということ。あと、私はホームレスと言えば公園等にブルーシートを張って寝泊まりしている人々のことだと思っていたのだが、労働賃金を得て簡易宿泊施設に宿をとる人も含まれるのだと知った。定住所を持たない人のことを指すのであろう。
印象としては、個人の努力ではどうしようもないところで失業→再就職失敗→ホームレス、になってしまった人が多い。なぜ羽振りの良かった時期に貯金しておかなかったんだろうかと小市民の私なぞは思うが、入る金が大きくなると出ていく金も大きくなるのが世の理なのだろう、たぶん。全てではないが、実際にインタビューされた本人の写真が掲載されているのには驚いた。よく使用許可が出たなあ。
過去に行われたホームレス全国調査データや、あるホームレスの一週間の行動密着ルポなどが興味深いが、興味本位に終わらず支援体制とその問題点まで言及しているのには意義がある。
一つ残念なのは、インタビューの終わりごとに記されている著者の見た各ホームレスの印象メモが、やや説教臭いものになっていること。内容も月並みというか明らかな正論が多く、わざわざ書かずともここは読者各自にゆだねた方がよくはなかったか。私には、この部分が蛇足と感じられた。