柴田よしき「求愛」
翻訳稼業の弘美が出会う、女性にまつわる悲しい事件。
「金と銀の香り」親友が元彼と結婚したが悩んでいるという。
弘美のお人好しが際立つお話。
「細い指輪」友達の事件から立ち直りつつある弘美だが…。
これは物語の都合上仕方なかったのかもしれないが、
クリニックに来ている患者の名や勤務先を医者が他の患者に
さしたる理由もなく教えることはフツーありえない。
立派な守秘義務違反だし。細かいことだがそこが気になった。
善意や義憤から出たこととはいえ、弘美の行動力には空恐ろしい
ものがあるね!探偵業に鞍替えした方が良いのでは、と思うほどだ。
「憎しみの連鎖」誰かにつきまとわれている感覚に襲われる弘美。
今までの傍観者の立場から一気に事件の当時者に。
彼女の職業選択は正しいんじゃないかと思うよ。
「紫陽花輪舞」いきなり少女の尾行を任された弘美。
彼女の直感山勘は同性相手に最大に発揮されるようだ。
「飛魚の頃」人は何をよすがに生きていくのか弘美は考える。
続く「ライヤー」と共に浮気調査の話だが、弘美の結論が
どうも私にはピンと来ないのだった。
それは幸せなことかもしれないが…。
「復讐」何のために探偵業をするのか悩む弘美は、我が身を振り返る。
計画が迂遠に過ぎると思うのだが、どうか。
戸籍や住民票をとられたら一巻の終わりだろうに。
「求愛」弘美の決意とは。
ここまで読んでいて不思議だったのがなぜタイトルが「求愛」
なのかということだった。まるでテレビの探偵ドラマのような
事件が続くので、短気な私などは【インテリ女探偵 弘美の事件簿】
でいいじゃないかと思っていたくらいだ。
だがラストでタイトルの謎は解けた。
弘美の成長物語でもあったのね。これだけ生臭い現実を直視しながら、
それでも新たなる一歩を踏み出そうとする弘美に乾杯!
p.s.表紙は内容と合っていないような…求が涙になってるデザインは
凝っているけれど。