読書日記PNU屋

読書の記録

椎名誠「銀天公社の偽月」

とてつもなく変わった世界での悪夢のごとき日常を描く
シーナ的SF作。


読者の想像力喚起する不可思議なネーミングが素敵である。


「滑騙の夜」奇怪な世界で暮らす夫婦。
ラストに途方もない衝撃が待っているのは小説ならではのサプライズ。


「銀天公社の偽月」造られた月を管理する男の秘密とは。
抑えた、だが確かなハードボイルド風味がたまらない。


「爪と咆哮」協力して物事に対処する男達だが、彼らの運命は一蓮托生で…。
これぞ持ち味、だろう。なんてグロテスク。
'70年代のクラシックSFを思わせる設定が魅力的。


「ウポの武器店」脂まみれの世界をさすらう男。
戦争後の荒廃した世界をこれほどのわびしく詳細な筆致で描く
小説があるとは。


「塔のある島」流れ着いたつがねと暮らす男。
周囲と隔絶されている島には圧倒的な静けさと孤独とがある。


「水上歩行機」灰汁ふたたび。
同著者の作品「砲艦銀鼠号」と合わせて読むと世界が広がって楽しい。


「高い木の男」樹上にて取材される男は…。
舌足らずな口調ながらトンデモ度が高く楽しい作品。
実在する隣国を彷彿とさせるが、未来のパラレルワールドなのかもしれない。