読書日記PNU屋

読書の記録

池井戸潤「空飛ぶタイヤ」

父の代から真面目一徹経営してきた赤松運送のトラックが
人身事故を起こした。
整備不良と決めつけられた赤松は、大企業ホープ自動車
闘うことを決意する。


著者お得意の銀行ネタもバッチリ織り込まれた企業サスペンス。
脱輪による主婦死亡事故は、現実にあった事件が濃厚に想起される。


現実がモデルとして透けて見える小説は私の好みではないが、
本書にはそれでも引き込まれた。
現実のスキャンダルを風刺したエンターテインメントでは
戸梶圭太「牛乳アンタッチャブル
が名高い。
大企業の馴れ合いと腐敗の構図をえぐり出す点で両者は似ているが、
軽妙な風刺作品である「牛乳〜」に対し、本書はリアルな重みと
感動を含んでいるところに面白さがあった。


現実がどうであったか知っていれば、勧善懲悪になることは
予想できるのだけれど、結果がうすうすわかっていても
そこまでの過程がスリリングで楽しかった。


p.s.沢田には、あの理由ではなく改心してほしかったな…。