読書日記PNU屋

読書の記録

中島らも「君はフィクション」


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著者の単行本未収録作品を一挙大公開な一冊。
娘さんの面白くてやがてせつない解説(ネタバレ含む)付き。


「山紫館の怪」
怪奇談だと思わせといてこのオチとは!
したたかである。


表題作は彼女の秘密に気付いちゃった彼氏の意外な行動が楽しい。
脱・常識!


「コルトナの亡霊」
誰もが最後まで見ることの出来ない恐怖映画をラストまで見ようとする男。
私もこの映画見てみたい。オチは予想がつくが、
少しずつ恐怖を盛り上げていくところがさすが。


「DECO-CHIN」
サブカル雑誌のライターが出会ったすごいバンドとは。
ライトなタッチながら幸せは人それぞれだということを思い知らされる。


「水妖はん」
ライターが訪問した田舎に伝わる奇妙な伝説とは。
コミカルなスプラッタ。


「東住吉のぶっこわし屋」
酔っぱらいにクラクションを鳴らしたばかりに…。
不条理の悲しみ光る。


「結婚しようよ」
フーテンとフォークと。
私は音楽に疎いのでここに出てくる人名の半分もわからなかった
のだが、テンポがよくムードを楽しんだ。


「ねたのよい −山口冨士夫さまへ−」
まるで地震のようなライブとは。
ネタ元になっている人を私は不学にして知らないが、
若さとロックとドラッグのひりひりとした味わいはあると思った。


狂言「地籍神」」
ダジャレやおふざけたっぷりの脱力ギャグ作品。


「バッド・チューニング」
完璧好きな調律師が悟るまで。
常識ってなんだろう。不思議なカタルシスある作品。


以上読んで思うに音楽ネタが多かったように思う。
収録作品の約半数に、バンドだったりライブだったり
楽器にこだわったり奇人が歌を執拗に口ずさんでいたりなど
何かしら音楽が関わっているのだ。
音楽に興味ある人ならもっと楽しみが広がる本だろう。


巻末の解説・中島さなえ「父のフィクション」は家族の目から
在りし日の著者を描いていて貴重だ。
「らも子」のくだりには笑い泣き!!


p.s.松尾たい子の表紙カバー画も内容をふまえていてgood!