皆川博子 宇野亞喜良・画「絵小説」
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美しい詩歌のイメージを妖しい魅力放つ挿画が裏打ちし、
さらにしなやかで濃厚な文章がそれらの味わいを引き立てる豪華な短編集。
「赤い蝋燭と……」
戦時中の幼き慕情。
かなわぬからこそ色褪せず永遠となるものあり。リフレインが効果的。
「美しき五月に」
時を越え巡り会う彼と彼女。
一見ロマンティックに見えるが、忘れられぬことはいかほどの恐怖だろうか。
もちろんそれゆえの再会の喜びはあろうが、果てしない繰り返しへの
絶望の方が大きく、だから祈りが生まれるのだろう。
「沼」
母と娘だけの秘め事。幻想味溢れる作品。
過去と現在の混ざり溶け合うさまが素敵だ。
「塔」
風変わりな姉と素直な弟。
キッチュかつエロティックな作中作(?)に魅せられた。
ニエッタ、ニムニムという呪文のごとき山羊の声が頭を離れない。
「キャラバン・サライ」
寂しい子供が見つけた安息の地とは。
あまりにも早熟すぎたのだろうか?読後寂寥感に襲われる。
「あれ」
祖母に温泉に連れて行かれた少女は、そこで…。
あらこんなにムードあるお話なのに、もしかして×話なのだろうか?!
あれが私もとても気になる。