島田荘司「UFO大通り」
御手洗潔と石岡が蜜月の暮らしをしていた頃の怪事件2編を収録。
カバーを外すと芝生の上にミステリーサークルのような紋様が
現れる凝った装丁。
表題作ではUFOと宇宙人の戦争を目撃したと語る老婆が登場。
突飛に見える事態が論理によってバケの皮をはがされていく様が快い。
社会派らしく現代社会への批判も(説教臭くならぬ程度に)交えている。
真相は察しの良い人ならば検討がつくだろうが、
マスキングの見事さには目をみはった。
「傘を折る女」
石岡がラジオで聞いた奇妙な行動をとった女の話。
御手洗の推理から浮かび上がる奇怪な真相とは?
実在する事件を彷彿とさせる描写があり、
私は小説中に現実の事件によく似た設定が出て来るのは
あまり好きではないのだが、発端以外は全くのオリジナルになって
いてミステリーとして楽しめた。
この緊迫感が凡百の小説とは一味違うところ。
しかし、傘ならわざわざ車に頼らなくとも女手一つで折ったこと
ありますが、私?
まあ作中の傘は高級なやつだったのでありましょう。
理詰めではなく直感や感情、好悪で行動してしまう女性一般への
皮肉が込められているようにもとれる。
そもそも発端はエゴむき出しの女の愚行であるし、
ある女は怒り身をゆだねたがゆえにあたら命を落とす。
そして最も賢いと見えた女もまた、感情に操られ意味不明な
行動を取り失敗をしでかす。
そんな女達を愚かと見るか哀れと思うかで、読後感が変わって来そうだ。
p.s.二作とも共通のモチーフが登場するのはマイナスと見たが、
一冊の本の中でのまとまりという観点で見たならば、
むしろプラスなのかもしれない。
ミーハーな御手洗ファンとしては、彼のケレン味たっぷりの言動を堪能した。