読書日記PNU屋

読書の記録

宮部みゆき「名もなき毒」

名もなき毒
宮部 みゆき著
幻冬舎 (2006.8)
ISBN:4344012143
価格 : \1,890

Amazonで見る

社報編集室の杉村は、実は今多コンツェルンの会長令嬢の夫。
野心なく謙虚に生きる杉村だが、連続青酸カリ毒殺事件に
巻き込まれていく…。


「誰か-somebody」誰か Somebodyの優しき素人探偵再び。
嗚呼!!彼はまだ自分の恵まれた環境を後ろめたく思って
くよくよしているのね!
他人の事件におせっかいを焼いてしまうのは、
幸福すぎる自分の罪滅ぼしというか、ひとの苦難を分かち合おう
という彼なりの代償行為なのかも。
優しくて想像力が豊かであることは、それだけで余分に
他人の苛立ちや悲しみを感じ取って、辛いものなのにね。


お嬢様は病弱だから仕方ないないところもあるが、
私などの感覚からすると彼女はやはり周囲から守られすぎ、
甘やかされすぎに思える。
だが夫である杉村は彼女を自分の価値観で斬ったりせず、
ありのままに受け止めるのだ。
一見小心に見えて彼がたいへんに懐が深いことに気づかされる。


本書にはこの著者の現代ミステリーで長年追いかけられている
テーマ…人の悪意が描かれている。
それは前作よりも過激な形で杉村一家を襲う。
人の悪意は毒はなぜ生じるのか。
それを避ける術のない我々は、ただ大切な人にそれが降りかかりません
ようにと祈りつつ、日々を生きていくしかないのかもしれない。


p.s.犯人の動機はちょっとピンとこなかったなあ。
だが悪意の加速っぷりは見所。
ゴンちゃん&いとこはいいキャラなので、続編にも登場
させていただきたい。