梶尾真治「時の〝風〟に吹かれて」
1998〜2006年に発表された短編を収録。
まず表題作。
実現したタイムマシンにはある制約があって…。
暖かくて、ちょっぴり悲しいお話。だが私にはラストがよくわからず。
「時縛の人」
タイムマシン発明者が語るあること。
ほろ苦い味わいでありながらどことなくユーモラス。
「柴山博士臨界超過!」
ホテルで大爆発、その恐るべき原因とは。
男地獄である。
「月下の決闘」
美女とブ男の恋には、裏があった?!
コミカルなハチャハチャ風味の作品。
純情男には、ラスト一言はきつかろう。
「弁天銀座の惨劇」
親切にしたばかりに…。
不条理パニックホラー。テンポの良さが見所か。
「鉄腕アトム」
アトムのカヴァー作品。
ペーソスのきいたシリアスな内容で、
本家の漫画に通じるムードを出している。
「その路地へ曲がって」
絶望した男がたどりついた場所とは。
これは「異形コレクション」2005.4
掲載時に既読。説明すらいらない極楽へ、
現実に疲弊しきった人間は行ってみたいのかもしれない。
「ミカ」
ペットに興味の無かった男が飼い猫にはまった理由とは。
キモかったらどうしようと思ったが、
話は心配した方向には転がらず安心した。しかし謎の多い話ではある。
「わが愛しの口裂け女」
余命いくばくもない父が語る愛の物語。
妖怪実在の理由が突飛で面白い。
「平成都市伝説」2004.10
で既読だったが、再読でもやはりラストは感動的だった。
「再会」
懐かしの校舎が水没するという。
集まった大人達はしばし少年時代のわくわくを取り戻すが。
おおよその展開が予想出来るけれども、いい話である。
「声に出して読みたい事件」
突如早口言葉を言わされる男。
ナンセンス・ギャグ。なぜこれを本のラストに置いたのだろうか?
言葉遊びに過ぎずストーリーは無いも同然で、言葉ネタですら
新しさは感じられず、やや無理やり感のある話である。
脱力ものにしてもほどがあるのではないだろうか。
これがトリを飾るのはやや残念と言わざるを得ない。