永井するみ「さくら草」
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高級ジュニアブランド「プリムローズ」。
その服を着た少女が殺された。
煽るマスコミ、そして次の殺人が…。
サスペンスとしての大筋…犯人は誰か、
動機は何かということより、プリムローズの服に執着する
人々が面白かった。
たとえば栞の登場シーンは面白く印象的。
話が進むごとに栞の悲劇のヒロインぶりにはうんざりする
ところもあったけれど…。
読者が感情移入しやすいのは刑事・理恵とブランドを切り盛りする
敏腕マネージャーの晶子だろう。
理恵は正義感にあふれ、晶子は理想に燃えている。
この二人の(内面には傷を抱えながら、それを見せない)二人の
強き女性は潔癖な点までも鏡像のように似て、互いにほのかに惹かれあう。
この二大ヒロインを創造し得た時点で、
本書のエンターテインメントとしての成功は決まったろう。
ラストはサスペンスの宿命か事件説明と犯人像に筆が割かれ、
魅力的なヒロイン達のその後は想像するしかないところが
やや私には残念だった。