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読書の記録

香納諒一「贄の夜会」

贄の夜会
香納 諒一著
文芸春秋 (2006.5)
ISBN:4163246800
価格 : \3,000

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犯罪被害者家族の会・会員女性が惨たらしく殺された。
刑事達は事件を追うが被害者の夫が消え、また新たなる殺人が…。
 

ボリュームのある意欲作である。
出だしは興奮したものの、後半どこかで見たことのあるような展開に
なってしまって残念。サイコサスペンスは、どうしてもT.ハリス
羊たちの沈黙」のくびきから逃れられないのだろうか。
真犯人像など、かなり影響を感じてしまった。
 

エンタメとしては充分愉しめる本作だが、私は小説として読んだ時に
不満を感じてしまう。それはT.ハリスっぽさのせいもあるし、
キャラクターがどこかステレオタイプなことにあると思う。
現実に起きた猟奇殺人を想起させる設定も惜しまれる。
細かい変更は加えられているが、現実モデルが透けて見えてしまうと
興ざめなのだ。
完全にオリジナルの、フィクションの事件にしていただきたかった。
 

あくまで個人の勝手な感想であるが、主人公の選定は失敗ではなかろうか。
大沢在昌タッチになってしまうかもしれないけれど、妻を殺されたあの夫を
主人公にした方が盛り上がったのではないか、と私には思われてならない。


p.s.男達は魅力的な本書だが、女性キャラは魅力が薄い。
心理学者の女性キャラには、
(小説の展開上そうでなければならないのだろうが)その幼児性に
うんざりさせられた。幾日も監禁されたならいざ知らず、
普通の神経を持った人間が、一日もたたないのに犯人の出したものを
ホイホイ食べるかねえ?