萩原浩「押入れのちよ」
ホラー短篇集。
「お母さまのロシアのスープ」
双子と母がひっそり暮らす家。
オチは予想出来るけれども、童話ちっくなムードがどこか可愛らしい。
兵ともあろうものがその程度で驚くかどうかは疑問だが。
余程、世間知らずだったのかも。
「コール」
男二人、女ひとり。三人の恋の結末は。
これは映画にもあるようなベタな話なんだけれども、爽やかでいいね。
「押入れのちよ」
退職して安い住まいを探したところ、そこには…。
悲しいながらもほのぼの風味であたたかな作品。
私は著者の熱心な読者ではないが、最も持ち味が生きるのはこんなタイプの
物語なのではないかと感じる。
「老猫」
相続した家には年老いた生き物がいた。
生理的嫌悪感煽る作品。いかにもホラーらしくはあるが、血縁のはずの
彼を彼女がどう思っているのか見えて来ないし、どこかモヤモヤ感が残る
(そういう狙いなんだろうか)。
「殺意のレシピ」
激しいケンカの末に夫婦は…。
オチは予想がついてしまうのだが、テンポの良いコメディだ。
「介護の鬼」
寝たきりの舅に積年の恨み晴らす嫁だが。
これもコメディタッチで陰湿な話をサラリと描いている。
実際には、廃用性萎縮とかあるから無理だと思うけれど。
「予期せぬ訪問者」
うっかり愛人を殴り殺してしまった男だが。
外国のコメディドラマにありそうなシチュエーションで、現実には
ありえないであろう状況ながらこれでもかと主役の情けなさを見せつけてくれる。
「木下闇」
十五年前、かくれんぼから見つからなかった妹を探す姉。
怖くて、やがて感動的なサスペンス。
ラスト二行は締めなんだろうけど無くても良かったかな。
「しんちゃんの自転車」
やんちゃなしんちゃんが誘いに来る。
これもオチはわかるんだけど、いい話。
こういうのは著者の面目躍如といったところだろうか。ほのぼの。