有栖川有栖「乱鴉の島」
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休暇に島へ向かったアリスと火村はふとした過ちから、
本来の目的地ではない「烏島」にたどり着いてしまう。
そこに集う奇妙な人々の目的とは…。
火村・アリスもの4年ぶりの長編とのこと。
著者あとがきにもあるとおり、孤島の連続殺人ではあるが
「派手さ」は無い。
エキサイティングな内容を期待した向きは、そこに拍子抜けするかもしれない。
だが、純愛など叙情的なテーマを内包しているので、
不思議と読み心地のよいしんみりした読後感を遺す小説となっている。
小説としては情動的な揺さぶりもあり、感動的なものの
ミステリーとしてはややあっけなさを感じる。
それは殺人の謎と人々の集う理由の謎が絡み合うようでいて、
微妙に不協和音を奏でているように感じられるせいだ(私にとっては)。
殺人の真相はインパクトこそあれど唐突に感じられ、
集う理由はおおよそ予想がつく内容であったので、
そこが私には不満であったのかもしれない。
ともあれ、相変わらずお人好しでお調子者のアリスくんと、
いつでもクールな火村さんにひさびさに会えてうれしかった。
2人のよりグレードアップした冒険にまた立ち会える日を今から
心待ちとしたい。