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読書の記録

誉田哲也「ストロベリーナイト」

ストロベリーナイト
誉田 哲也著
光文社 (2006.2)
ISBN:4334924867
価格 : \1,680

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姫川玲子は「死体マニア」と陰口を叩かれるほど仕事熱心な
女警部補。連続リンチ惨殺事件を追う姫川班だが…捜査サスペンス。


本書を刊行から4ヶ月遅れでようやく読んだわけだが、
それは私がこの著者を好きでなかったせいである。
ホラーサスペンス大賞特別賞の「アクセス」アクセス2004.1
で読みやすさとスピーディな展開は評価出来るものの、
ヒロインのあまりの冷酷さにぶっ飛び、
もうこの著者の本は読まなくていいや、と思ったのである。


だが、ネット上で私が参考にさせて頂いている書評家さん
でこぽんさんの書評→http://d.hatena.ne.jp/yookoo/20060312
キノさんの書評→http://clp.rdy.jp/book/log/eid109.html
で面白いと言っておられて、それで遅まきながら手を出した次第。


いいね、コレ。「アクセス」から五作目?
作家というのは化けるものである(失礼)。
とにかくヒロイン玲子の造形がいい。悲しい過去を抱えつつも
仕事に打ち込む彼女は多くの女性読者の共感を呼ぶのではないだろうか。
女性警部補の奮闘ぶり、ユニークすぎる刑事達、過激な連続殺人と
見所たっぷり出血大サービスな物語だ。


ただ残念なのはラスト謎解き部分での失速だろうか。
引き金となったあの彼の襲ってくれと言わんばかりの行動といい、
テンション高い前半に比べ後半はやや都合良さが目立ったかもしれない。
そして、またしてもえ〜この人が美味しいとこ持ってくなんて…
という気分にさせられてしまった。
そこまではいい感じだったたけにスローダウンが惜しまれる。


小さな不満はあるが、特に前半には魅せられた。
新たに注目したい作家リストに誉田哲也の名を載せたくなる、
そんな作品である。


p.s.警察内部の秘密主義やしがらみと軋轢は横山秀夫がオハコと
していて本書はそれら既存の警察小説を超えるものではないが、
キャラ立ちでエンタメ度を上げていると思う。