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読書の記録

岩井志麻子「死後結婚 サーフキョロン」

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韓国には、死者と生者を結婚させる風習があるという…。
美女・沙羅にいざなわれ、韓国を旅する京雨子が見た世にも恐ろしいものとは。
 

この著者お得意の官能ホラー。
前半は本当に素晴らしくて、これは「岡山女」岡山女
(しつこいが、著者最高傑作と私が勝手に思っている作品がコレ)を
超えるかも!!とゾクゾクワクワクしたのだけれど、オチはおとなしく、
予想圏内に収束してしまって、やや残念。


しかしこの京雨子の幻視者ぶりときたら素晴らしく、異界からの使者が
ゆらぎたちのぼる様子は絶品。このヴィジョンを味わうためだけでも、
読む価値はある。
京雨子の味わう、生理的にクる不気味な幻想に対して、作中作の韓国の
民話はどことなく可愛らしい。起きていることは残虐極まりないのに、
どこかほのぼのしてしまうのが不思議だ。
Pにはその後まで語ってほしかったと思う。
 

本書は、今までの岩井作品の集大成のような本である。
著者の私生活を反映してか、ここ数年の作品に繰り返し出てくる韓国と
ヴェトナム。そして近著にも見られた同性愛と人類のタブーである、
×××姦(ネタバレを防ぐため伏せ字)が本書でもまた繰り返される。
幻視の静謐にしておぞましく禍々しいイメージは掛け値なしに素晴らしいが、
ストーリーが似たようなことのリピートであると、読者としてはやや飽きが
くるのも事実。