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読書の記録

松岡圭祐「千里眼背徳のシンデレラ」

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千里眼の女・岬美由紀シリーズ今回は、
友里佐知子の遺志を継いだ鬼邑阿諛子が美由紀の前に立ちはだかる。


ツカミから日本沈没!?大胆な設定で度肝をぬいてくれる。
それがどういう意味を持つのかは想像ついたけれど、
ただのウンチクに見えた描写がのちのち効いてくるとは
予想を越えていた。


伏線がきれいに回収される様は見事と言っていい。
現在進行する陰謀と併走して、友里の秘められた過去が明かされるなど
見所盛りだくさんだ。


エンタメとしては非常に面白いのだが気になる点も。
創作が現実をなぞる必要は必ずしもないと思うが、医学的手技が
そんなに急速に習得出来るものか、とか(人体って個体差大きいから
戸惑うと思うのよね)、ぽつぽつアレ?と思うこともないではない、
しかしこのダイナミックな展開の前には、そうした重箱のすみつつきは
野暮であろう。
 

読んでいくにつれ、悪の化身であったはずの鬼邑阿諛子が
だんだん可哀想になってくる。誰か彼女を救ってやってくれ、という
気持ちにさせられていく。そこは著者の、情を揺さぶる描写の巧さだと思う。


そして、ラスト…日本的文化ではあの幕引きこそが美しいのかも
しれないが、私には残念だった。彼女には、汚泥の中を這いずってでも
償っていただきたかった。美由紀もそれを望んでいたのであろうし。 


p.s.しかし鬼邑阿諛子って、人からひかれるほど奇抜な名前とは、
思わないんだけどな?アユコって響き、可愛いし。そこは納得いきませんな。