岸田るり子「出口のない部屋」
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ある作家のもとを訪ねる女性編集者。
彼女が作家から受け取った原稿には、奇怪な密室が描かれていた…。
ミステリ・フロンティアの一冊。
私は著者のデビュー作「密室の鎮魂歌」2004.10
を読んで、やや登場人物の言動に納得出来ない点があったのだけれど、
真相の与える衝撃、壮絶さには心動かされるところがあったので、
本書を手にとった。
本作は、トリックの実行にやや粗さも目立つが
(たとえば、×××リはどこから入手出来たというのだろうか?)
第一作よりは心理面での矛盾もなく、
また妖しい作中作の世界が現実と混じり合い、混迷を深める様子が
ゾクゾクとして楽しかった。
真相はそういうことなんだろうな、とは予想がつくが、
真犯人の凄絶な心中には予測していても驚かされるものがある。
グロテスクだたりキッチュだったり、感情的な盛り上がりを見せる
展開は巧いものの、ひとつ難があるとすれば、斬新さは感じない
ところだろうか。どこかレトロなというか、古びた印象が漂う世界
なのだ。好みによっては全く疵にはならない点であるが、
私はそこがやや気になった。