三浦明博「サーカス市場」
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奇妙な店が立ち並ぶ怪しきサーカス市場にまつわる、
不可思議な味わいの短編集。
「毛鉤女」
地下鉄から美女を尾行する。
伏線は見え見えだが、謎めいたムードは好ましい。
「面妖屋」
父の思い出をたどる青年。親子の距離のもどかしさを思う。
「裏サーカス」
追われる女が垣間見る異界。裏サーカスの内情をもっと知りたかったな。
「黒白天秤」
消えた妻を探す男。
これも描きすぎぬところが美かもしれないが、その先を知りたい。
「袋小路軒」
夜中市の人気店を探る男女。
携帯で写真を撮る=スパイ、というのは発想が飛躍しすぎに思えるの
だけど、いかが?きょうび、ブログに載せるのに写真撮ることなんて、
素人でもあることだし。
スパイならば、料理の現品をこっそり持ち帰ったりするのでは?
「膝折男」
第一話の高杉&浮田ふたたび。
この二人組はノリが良くて楽しい。
以上読んで来て、ライトな楽しさはあるものの、
深入りしようとするとかわされる作中世界にもどかしさを覚えた。
現実と非現実の境をたゆたう物語であるから、その曖昧さ、
薄暮のごとく不安と期待入り混じる味わいを愉しむべきなのだろう。
一癖あるが基本的には人の良い石神など、使い捨てるには惜しいキャラも。
続編を読んでみたい。