読書日記PNU屋

読書の記録

平山瑞穂「忘れないと誓ったぼくがいた」

忘れないと誓ったぼくがいた
平山 瑞穂〔著〕
新潮社 (2006.2)
ISBN:4104722022
価格 :1,470円
通常24時間以内に発送します。
Amazonで見る
 

織部あずさ。愛しい彼女。
でも、「ぼく」は彼女を知っているが、覚えていない…
せつない青春ラヴ・ストーリー。
 
衝撃的だった前作「ラス・マンチャス通信」オンライン書店ビーケーワン:ラス・マンチャス通信2004.12
とは趣向を変えて、本作はぐっと現実よりの舞台から始まる。
前作の幻想風味を愛した身としては、出だしのライトなSFテイストに
やや拍子抜けしたのだが、そこはそれ、読み終えてみれば
ラヴストーリーとして愉しめた。
あずさの心がなかなか見えて来ないのだが、
一途で不器用で、思いこんだらイノチガケな主人公「ぼく」には
好感が持てるし、親友ヒロトのキャラもいい。
現象に説明がつくわけではなく、
それゆえに謎めいた余韻が残りもするし、
また説かれぬ疑問が残りもするけれど、作り込みすぎていない
ストレートな恋愛ものとしてはとしてほろ苦い仕上がりを味わう
ことが出来て良いのでは。
ただ、本作のネタ自体は短編の方が適しているような気がしないでもない。
私が薄情なのかもしれないが、中盤で少しのりきれぬところがあったので
…短編〜中編であればもっと鮮やかな印象の作品になったように思えた。