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読書の記録

柳原三佳「死因究明 葬られた真実」

死因究明
柳原 三佳著
講談社 (2005.9)
ISBN:4062130955
価格 :1,470円
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北海道で高校生が変死したのに、交通事故として扱われ、
周辺捜査が充分なされなかった事件、
神奈川で交通事故者を警察が病院に搬送せず、亡くなられてしまった事件
を中心に、日本の検死制度の不備を暴くノンフィクション。
千葉大法医学教室も取材し、法医学・検死制度の現状と改善点までも探る。
 
私は法医学に興味があっていろいろ関連書を読みあさっているのだが、
木村氏の巻き込まれた事件などは知らなかったし、
神奈川の警察の不祥事の裏にそのような事態があろうとは、
予想も出来なかった。
日本の検死体制に、これほどの不備があろうとは…。
ケースとして紹介されている事件は、もしも自分の肉親の身に起きたら
どれほどつらいことかと胸引き裂かれるような思い。
法治国家・日本の安全神話をゆるがす事実が満載。
検死解剖さえきちんとなされていれば、防げた殺人も多々、
あるのである。
 
検死の意義、重要性を説く迫力のルポでありながら、
著者が医学界に対してドラマや小説の世界のような華美なイメージを
持っていたというくだりには驚いた。多くの検死医ドラマは、
それこそ西洋の、華々しい小説や整備された法制度のイメージを
持ち込んだにすぎず、実情に沿ってはいないから…
(現に私の出た大学でも、法医学教室は10年にひとり新人が入るか
どうかの、地味で人気のない教室だった)。
本書の重要性…法医学者の努力にもかかわらず、日本の制度が
かなりアバウトであるということ…はもっと世に広く知られるべきで
あると思う。