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読書の記録

三崎亜記「バスジャック」

バスジャック
三崎 亜記著
集英社 (2005.11)
ISBN:4087747867
価格 :1,365円
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不可思議な味わいの短編集。
この著者の「となり町戦争」は、巷の評判は良いようだが
私には激しく合わなかったのである…。
案の定、「二階扉をつけてください」は社会に無関心な男の物語で、
「となり町戦争」と直接のつながりはないがそのシチュエーションは
似通っており、ありえねぇ!と思いつつ苦しみながら読み終えた。
奇妙な話は、最初の設定を受け入れられるかどうかで決まってしまうからな。
 
「二人の記憶」「雨降る夜」はどうもオチが弱く感じられて合わなかった。
 
「しあわせな光」はベタな感動作だが、同ネタが多数既出の小説界に、
なぜ屋上屋を架すのだろう? 

反対に、オリジナリティがあって面白かったのが表題作「バスジャック」。
キャラも立っており、キレている。イカしている。
最初にこれを読んでいたならば、私がこの著者に苦手感をいだくことも
無かったろう。
 
「動物園」佐藤哲也椎名誠の不思議小説を思わせる内容で、好み。
 
「送りの夏」ダークすぎない微妙なムード好ましい作品。
ひょっとして、それはマ××ンではなく、プ××ティ××ションではないか
と思うのだが、どうだろうか?質感の説明はつくと思うが。
しかし、そうして事情をセンサクするのは野暮で無粋なことかもしれない、
そんな聖域めいた雰囲気を持つ静かな物語であった。
謎が謎のままなのもかえって余韻を残して良。
 
以上、すごくつまらなかった話4つ、非常に面白かった話3つなので
この評価とした。しかし2作目でこの奇天烈な世界を構築出来るのであれば、
次回作にも大いに期待したい作家である。