読書日記PNU屋

読書の記録

柾悟郎「さまよえる天使」

オンライン書店ビーケーワン:さまよえる天使2005.10光文社\1,785
 

それは死体、それとも人形?吸血鬼とも呼ばれる三百分の一の速度で
生きる人々の物語。
「ブレスレス」「影とひとりぼっち」「球光」「さまよえる天使」
「ダイヤモンドと錆と」「ブルームーンライジング」
ブエノスアイレスで私は死のう」を収録する連作SF。
 
「ブレスレス」の抑えた官能があまり好みではなく、
続く「影とひとりぼっち」のヰタ・セクスアリス的展開も私が苦手と
するところで、果たして読了出来るかどうか気をもんだが、
オカルティックな風味増す「球光」からは俄然面白くなり、
ぐんぐんと読むことが出来た。
一編一編味わいを変えていく趣向がお見事だ。
 
ヴァンパイアそのもの的描写は少ないが、萩尾望都ポーの一族」にも
似た叙情的な不思議感覚から、壮大な愛の歴史まで1冊で何度も美味しい
SFと言えるだろう。 
 
p.s.皆川博子「薔薇密室」にも似たようなモチーフが出てくる
のだけど(あちらは融合するモノが同じであって、時間の設定は違うけれど)、
元ネタになるような伝承があるのだろうか?