読書日記PNU屋

読書の記録

川上弘美「此処彼処」

オンライン書店ビーケーワン:此処彼処2005.10日本経済新聞社\1,365
 

きらめくセンスでつむがれた、場所に関する記憶エッセイ。
 
私は著者に嫉妬する。素敵な記憶をお持ちなこと、
そしてそれをありありと読者に伝えうる類い希な文才に。
五感を駆使させ想像力を喚起する文章を読むと、まるで著者の記憶を
追体験し共有できたかのように錯覚してしまいそうになる。
作家、おそるべし。
 
「東京日記 卵一個ぶんのお祝い。」がたいへんに面白く、
私好みであったので続けて本書を手にとってみたのだが、これもまた
大当たりであった。意外なことに(?)地名を明記してのエッセイはお初、
なのだそうである。知っている場所も知らない場所も、不思議に素敵に
輝きだすかのように思える本だった。この感覚は、読んだものにしか
わからない。ぜひこのリアルかつふわふわとした不可思議な感覚を
読者諸賢に味わっていただきたく思う。