読書日記PNU屋

読書の記録

不知火京介「女形」

オンライン書店ビーケーワン:女形2005.9講談社\1,680
 

桔梗屋で歌舞伎役者となるべく修行するすみれ。
舞台上で役者の変死が持ち上がる…これは自殺?事故?それとも
…謎を探るすみれだが。
 
私は一度も歌舞伎を見たことがない。日本の伝統芸能として
そういうものがあるというのは知っているが、演目もロクに知らないし
近藤史恵の歌舞伎ミステリーでちらっと読んだくらい)、
歌舞伎に興味もない。そんな門外漢の感想であるから、果たして
歌舞伎通の方にとって面白いかどうかはわからないが、私には愉しめた。
 
乱歩賞受賞作「マッチメイク」でも感じたことだが、この著者は
キャラクターの造形がうまい。無理なく感情移入出来る主人公もいいし、
兄弟子や師匠、青松など脇役もキャラが立っていて楽しいのだ。
 
ミステリーとして見ると、動機や真相はどちらかというと古めかしく、
また豊富に文中にちりばめられた手がかりによってスジが読めてしまう
人も多いかとは思うが、芸に身を捧げる心意気のようなものが迫力であり、
快かった。