西澤保彦「フェティッシュ」
2005.10集英社\1,995
葬式に足繁く通う男が出会ったのは、妖しいほど美しい少年だった。
一方、謎の女性連続殺人事件が発生し…。
聖少年に惹起される出来心を描く作品。
人間には、なぜ性欲があるのだろうか。種族維持のためとはいえ、
それが悲劇と犯罪のもとになるとはやるせないことだ。そして本書、
性欲とそれから生じる煩悩によって身を滅ぼしていく人々が描かれている。
小説は元来オモシロイ/ツマラナイで分ければ良いのであって、詳細な
ジャンル分けは意味がないかもしれないが、敢えて言うならミステリーと
いうよりもホラー&サスペンス寄りの内容となっている。
この著者の、ふだんの軽妙な作風からすると本書は異色作、なのかもしれない。
読みやすさと面白さは折り紙付きの著者であるから、多少のグロテスクさ
はあれども読み出せば作中にひきこまれてしまうだろう。私はそうだった。
ブラックでダークな世界であるが、フィクションに限ればそれもまたよし。