読書日記PNU屋

読書の記録

倉阪鬼一郎「汝らその総ての悪を」

オンライン書店ビーケーワン:汝らその総ての悪を2005.9河出書房新社\2,310
 

父に長年虐待されてきた浚は、街娼ナナと出会い、狂気の世界へ
二人で旅立っていく。
 
一言で言うとエログロナンセンスなのだろうか、だがとてもそんな言葉
では言い表せぬおそるべき作品だ。
あらすじだけ抜き出せば、狂信的な狭い世界にはまりこんだ男女の殺人紀行。
あったことだけ抜き出せば、そのへんの三面記事をにぎわせていそうな
事件ではあるが、純情な男の聖書を糧とした妄想と、男に追随し、また
煽り立てる女の鬼気迫る姿が迫力。
 
ベッドシーンがたくさん出てくるのにもかかわらず、
ポルノにならないのはその凄惨さゆえだろうか。
スプラッタ・ホラーでありつつ下卑たところがないのは、
実行者の強烈な信念と敬虔なまでの容赦無さに背筋凍るせいだろうな。
著者お得意『字』へのこだわりぶりも健在で、「鳩の来る家」のような
陰惨でぞわぞわと忍び寄る恐怖がお好みならば、本書は必読。

p.s.無宗教(強いて言えばアニミズム?)な私にはエンタメとして
読むことが出来たが、クリスチャンにはおすすめできかねるのでご注意を。