読書日記PNU屋

読書の記録

歌野晶午「そして名探偵は生まれた」

オンライン書店ビーケーワン:そして名探偵は生まれた2005.10祥伝社\1,785 


ミステリー3編を収録。
オンライン書店ビーケーワン:生存者、一名2000.11祥伝社\400オンライン書店ビーケーワン:館という名の楽園で2002.6祥伝社\400

2篇は以前祥伝社文庫版で既読だったのだが、
書き下ろしの表題作が読みたくてね…。
 
「そして名探偵は生まれた」
名探偵・影浦とその助手・武邑は密室殺人事件に挑むが。
 うぉぉ、エレファント(←「大学への数学」的比喩)なトリックだ!!
というのはネタバレになるだろうか。
初期の信濃シリーズを彷彿とさせながらも、ライトにしてブラックな
ノリが忘れがたい作品。
 
「生存者、一名」
これは、長編ホラーに充分使える濃いネタなのに、潔く中篇に仕上げ
余分を削いだ驚きの一冊。めまぐるしく息苦しいサバイバル!ドキドキ。
 
「館という名の楽園で」
「救いがたき猟奇の徒」である男が、自ら「館」を建造し、かつての
友人を招いて行うのは推理ゲーム。推理マニアには夢のような、
ミステリーナイトの始まりだ。
館モノならではの大トリックにミステリアスな作中作。
そして、真相が明らかになるとき、悲劇が待っていた。
友人たち(登場人物)は、最初から最後まで館の主人(作者)の
シナリオに翻弄されたというわけだ。
 
一読した時の評価は「生存者、一名」>「館という名の楽園で」だった
のだが、今回再読して逆に感じた。
エレファントなトリックは初読の衝撃が大きく、エレガントなトリックは
後からじわじわと効いてくるのかもしれない。
ミステリーとは奥の深いものだな…。