読書日記PNU屋

読書の記録

柴田よしき「激流」

 
オンライン書店ビーケーワン:激流2005.10徳間書店\2,100


「わたしを憶えていますか? 冬葉」冬葉…それは、
中学校の修学旅行で、京都に消えた少女。
20年の時を経て、元クラスメートに送られたメールは
本人からなのか?それとも…?
 
20年前の修学旅行で同じ班だった男女が、突如送られてきた
メールに過去の記憶甦らせる、ノスタルジックでセンチメンタルな
サスペンス。
 
う〜ん、分厚い…。男女7人の青春物語(しかも中年になってからの回想)
なので私には設定に無理があるように思えてしまった。
中学時代…って自分はほとんど覚えていないなあ。
顔がはっきりわかるクラスメートも4,5人だし(…私が忘れすぎ?)
私も今、本作の主人公たちに近い年齢だけど、そのうち付き合いの
ある人なんて全然いない寂しい人生なの。
そのせいか、彼らが濃密に中学時代の思い出を語り合うのを見ていると、
違和感をおぼえてしまうのだった。
中学の記憶って、高校や大学を経るうちに上書きされて薄らいでいく
もののように思えたので。あくまで私の場合だけど。
 
巧いのが女性のなにげない習慣がリアルなところで、たとえば高い
満足を得たいためにいつもお気に入りの同じパンを買ってしまう女性
なんて、とても共感出来る。
時とともに移ろうものと不変であるものを鮮やかに対比させてみせる
ところも、いい。ただしかし、このネタでこのページ数は長く感じられて
しまう。登場人物が多く、彼らを大事に描いて
(皆をほぼ同等の比重で書いて)いるために、物語の本筋という激流が、
細い支流へと枝分かれして勢いがそがれたかのような印象。