読書日記PNU屋

読書の記録

小路幸也「ホームタウン」

オンライン書店ビーケーワン:ホームタウン2005.8幻冬舎\1,680


ちょっぴり特殊な職業に就く柾人。
久しぶりに妹から来た手紙にはうれしい知らせがあったが、
突如妹の同居人が訪ねて来て…。
 
おしゃれでじんわりあたたかくて。
「HEARTBEAT」ほどのせつなさは無いかもしれない、子供も出ない
(成人した登場人物を通して、思い出として子供心が語られる場面はあるが)。
しかしそれでも爽やかな感動が待っている、そんな1冊。
 
柾人には、ひょうひょうとした見かけからは想像もつかない苦悩が
秘められている。
その過去を共有する妹は、だからこそ消えねばならなかった。
彼女が消える理由というものが、ひょっとしたらわかりにくいかも
しれないのだけれど、尊敬出来ない親を持ってしまった私のような読者には、
グッと来たなぁ。家族の破壊と再生の物語でもあるのだね。
安易に血縁だからどうこうというラストに堕ちないのもいい。
自らの家庭・出自に苦しめられている大人は、本作を読むとどこか心が
軽くなるのではないか、そんなことを思った。