読書日記PNU屋

読書の記録

森絵都「いつかパラソルの下で」

オンライン書店ビーケーワン:いつかパラソルの下で2005.4角川書店\1,470

頑固オヤジだった父の死後、ある女性から父に関する信じられない話を
聞き、戸惑う子供たち。父の故郷である佐渡へ、ルーツ探しの旅に出て…。
 
ああ、これは現代版「和解」(志賀直哉)っぽいね。
もちろんキャラクター設定や展開は違うのだけど、なんともウヤムヤになりゆく
親子間の感情からそう感じた。
 
厳しくしつけられた子供たち(と言っても成人しているのだけど)が、
父に対する様々な思いを抱きながら、心の中で亡き父への感情を整理して
ゆくさまが感動的…なのであるが。私個人は親との関係がとても険悪なために、
厳しいと言ったってそれなりに愛情をかけてもらっていたんじゃないの?
とか、ホントに厭なオヤジというのはこんなもんじゃないですよ?などと
思ってしまい、どうにも受け入れられない世界なのだった。
この程度で反発かい!!ってね…でもそれはそれで否定するわけじゃあなくて、
生ぬるいけど兄と姉妹のキャラが立っているのでそこそこ楽しいんだけど、ね。
 
あと、佐渡へ渡ってからが急に夢の中のようにぼんやりのんびりになって…
その味わいを好む人もあるとは思うのだけど、私は退屈してしまった。
しかし、それでも全体として見れば素敵な親子物語となっているのがさすが
なのかな…。とかくもつれがちな親子関係には、冷たいと思えるくらいの
突き放した視点であるとか、或る程度距離をおいてみるとか、
深入りしすぎず煮詰まりすぎずといった態度が好転のキッカケになるかも
しれない、そんなことを思わせる爽やかな読後感の作品だった。

p.s.濡れ場もあるのに爽やかなのは、深刻になりすぎないせいかもな。