読書日記PNU屋

読書の記録

新堂冬樹「吐きたいほど愛してる。」

オンライン書店ビーケーワン:吐きたいほど愛してる。2005.1新潮社\1,470


変態で鬼畜、グロテスクかつスプラッタなエロス&ヴァイオレンス
短編集。生理的嫌悪感をこれでもかこれでもかと煽り立てる描写なので、
万人にはオススメしない。とくに、悲惨な妊娠やら流産の描写やら
女性虐待が目立つのでそういうのが苦手な人は読んではいけないと思われる。
 
小川勝己「ぼくらはみんな閉じている」だとか、
戸梶圭太「アウト オブ チャンバラ」などのハチャハチャで残虐かつ
冷酷なのにひとはけユーモアが彩るような作品を好きな方はどうぞ。
 
「半蔵の黒子」毒島という名字と、頬にある大きな黒子。
それさえなければ自分はカンペキなのに、と半蔵は突っ走る!
これは鬼畜な話だなぁ。ちょっぴり常識から逸脱してしまった人間の
悲哀なのだが、本人は案外幸せかもしれない。ブラックユーモアが
ピリリと効いていて、なみにグログロであるのに、いつしか小気味よくすら
感じられてしまうのが心底恐ろしい。田中啓文「異形家の食卓」、
綾辻行人「眼球綺譚」と並んでグロテスク・グルメ本に殿堂入りさせたい
くらいグロ。
 
「お鈴が来る」たった一度の過ちが、妻を変えた…夫はそこまで耐えることが
出来るか?
これはリアリティもいまいちだし、筋も読めてしまうのだが、妻の狂いぶりが
著者の傑作「カリスマ」を思わせて懐かしかった。
 
「まゆかの恋慕」傷付いた少女を助けた青年は、夢のような同棲生活を始める
ことに。
最近著者が感心を抱いているらしき、純愛もの。当事者二人は純愛ではあるが、
背景が鬼畜極まるので残酷絵巻になっている。
 
「英吉の部屋」実の娘から虐待される老父。その理由は…。
間違った愛と言えば本作の中でピカイチなのがこれ。今までの主役たちは、
愛情にエゴが入り込んでいたりもしたのだが、これはさらいひどい。
親が子を愛する愛し方がかなり歪んで間違ってはき違えていて、
親は真摯な愛情だと思いこんでいるのだから救われない。
あまりにブラックなラストには驚かされた。