読書日記PNU屋

読書の記録

北國浩二「ルドルフ・カイヨワの憂鬱」

オンライン書店ビーケーワン:ルドルフ・カイヨワの憂鬱2005.5徳間書店\1,995


胎児の神経系発達に打撃を与えるゲノム・ウイルスが蔓延し、
治療法の確立していない近未来。政府は体外受精による管理出産を
義務化しようとしていた。
遺伝子問題を専門とする弁護士・カイヨワは、美女からある依頼を受けるが…。
 
メディカル・ハードボイルドというかサスペンスというか、意欲作だと思う。
先端の医学における倫理的問題を説明臭くならないようわかりやすく描写
しているところにも好感が持てる。難問に逃げず取り組みながら、
複数の事件を同時進行させたりとエンターテインメントとしては、
これが新人賞の受賞作ということを考えると素晴らしい出来。
 
しかし、カイヨワがトラウマから物事に受け身であり(だからこそ、
あの再会が感動的なのかもしれないが)、彼の親友は経歴含め魅力的だが
活躍の場面が少なすぎるとか、依頼者の女性があまりにヒステリックで
ついていけないなど、それらの点をさしひいてこの評価となった。

p.s.柄刀一「ifの迷宮」とも共通するテーマなので、
遺伝と健康に興味ある方はどうぞ…。