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読書の記録

西澤保彦「腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿」

オンライン書店ビーケーワン:腕貫探偵2005.7実業之日本社\1,680


櫃洗市一般苦情係、銀縁眼鏡に腕貫をはめた典型的なお役人姿の
男性。彼は相談者の話を聞くだけで謎をズバリと解き明かしてしまう、
究極の安楽椅子探偵だった!
 
「腕貫探偵登場」「恋よりほかに死する者なし」「化かし合い、愛し合い」
「喪失の扉」「すべてひとりで死ぬ女」「スクランブル・カンパニィ」
「明日を覗く窓」を収録するミステリー連作集。
 
このお役人の名探偵ぶりがあまりにすごく
(超能力とは言及されていないが…)同著者の「完全無欠の名探偵」を
連想させるムード。相談者が次々訪れるところは「リドル・ロマンス」
みたいでもあり。
 
現実ならば不確定要素が頻出してこんな名探偵は存在不可能かもしれないが、
小説だからこその快刀乱麻ぶりを愉しみたいところ。そこが遊び心。
 
謎自体はライトであったりもするが、そこを魅力的なキャラクターが
彩り味わいを深めている。影の主役的な蘇甲君なども好ましく、
時にはラブコメ・時にはホラーと様々な人間模様を魅せてくれる一冊だ。
読後感は爽快。