読書日記PNU屋

読書の記録

井上雅彦「ベアハウス」

オンライン書店ビーケーワン:ベアハウス2005.2光文社\500


ミスティヒルとよばれる、霧深い土地。
そこには「魔王」と呼ばれる伝説の熊が住んでいた。
一方、そこで多発する幽霊目撃。「ブーギーホロウ」のささやき
が意味することとは?
 
人喰う怪物が暴れ回るのだけど、その暴れ方が華麗すぎて
不思議と怖さを感じなかったりする。立ち回りは鮮やかで、
夢のように美しい文体ゆえだろうか?
 
展開は或る程度わかってしまうのだけど、それも丁寧な
伏線ゆえか。テクニックはすごいものがあり、ネタバレして
しまうので詳しくは書けないが、トロンプルイユのような…
幻想と現実混ざり合うような描写が素敵だった。
何度も作中で示唆されたことをつないで見れば、自然と答は
現れてしまう。それはフェアな作品であることの証明かも
しれないが、読者としてはサプライズをそぐことにもなり、
難しいところ。