読書日記PNU屋

読書の記録

芦辺拓「三百年の謎匣」

オンライン書店ビーケーワン:三百年の謎匣2005.4早川書房\1,785

森江春策に遺言状の依頼をしてきた老人が持ってきた
奇妙な本。時代を感じさせるそれには、6編の様々な
時代と場所の物語が…。
 
未読の人の興をそぐといけないので詳細は伏せるが、
6つの味わいのある物語が味わえて、それが現在とも
リンクする妙といったらこたえられない。
いくつもの不可能犯罪を1冊で味わえて、ラストまとめて
二重三重に込められた意味が明かされる、
これこそミステリの醍醐味だろう。
 
連作ではなく「連鎖」長編とはなんぞや、と思うわけだが
読めば納得。現実と本の世界のつながり方が粋で好きだ。
著者あとがきでも触れられているとおり、まこと労作。
そしてまた意欲作であり力作であり傑作なのである。

p.s.芦辺拓作品は「殺人喜劇の13人」「歴史街道殺人事件」
の頃はすごく好きだったのに、最近の「紅楼夢の殺人」
「切断都市」ではどうも楽しめず、私とは合わない作家さん
なのか…と思っていたけれど、本作でファン心復活。
森江さんはやはり良いな。