読書日記PNU屋

読書の記録

阿部和重「グランド・フィナーレ」

オンライン書店ビーケーワン:グランド・フィナーレ2005.2講談社\1,470

少女の裸愛好趣味がバレて、離婚され娘の親権も失った中年・沢見。
彼は田舎に引っ込み、心機一転をはかるが?
 
表題作の他3編を収録。
 
芥川賞受賞作ということで読んでみたが…私には得るものが
とくになく、がっかりであった。芥川賞選評を読んだら、
あらまあ苦しげ。芥川賞の意味って、何でしょうね。
 
ともあれ表題作。沢見というロリコンが私の気に入らない
であろうことは読む前から予想していたことではあるが、
まあひどいひどい。ひどい人物の、心の醜さを描ききるのも
文学であろうが、この小説はそんなことしてくれない。
ただのおバカさんな中年男が、自分はロリコンだけど上手く
やってきたんだもん、娘のことも愛しているんだもん、
とダダをこねているだけで醜悪不快。
 
出だしのわかりにくさも相当なもので、ひょっとして沢見は
常軌を逸してるのかしら?と思ったが、そうでもないらしい。
やったらまわりくどくて状況がわからんぞ。この小説は
わかりにくさにおいて、山崎ナオコーラ人のセックスを笑うな
を超えたね。
 
もしかして、このような小心者小市民によって非情な
ロリコン犯罪がなされる可能性もあるが、同じだけ彼が改心して
いく可能性もある、という希望を謳ってるのか?私には理解不能
 
ラストっぽくないラストで読者にまるなげというのは文学には
ありがちだが、ラストでオチてないわけで、なんだか半端な印象
しか残らない。
 
このおバカ主人公が、友人からあれだけ罵られていながら、
自己嫌悪に陥らず欲望に突っ走るのがたいへんに不思議だった。
やはり私には理解出来ない。そして、舞台はしつこく神町
著者はなにやら「神町」に波ならぬこだわりを抱いている
ようなのだが、一読者である私には何のこだわりもなく、
またこだわる理由も理解不可能であるので「シンセミア」で
もう飽きた。
 
ロリなのに大人の女性をよく妻に出来たな…。
 

「馬小屋の乙女」神町に降り立った一人の旅人は、何を求める。
バリー・ユアグローのような旅人の一瞬を描くのかと思ったら違った。
これ、ギャグ?それとも落書き?夢の日記?いずれにしてもよく
わかりません。
 

「新宿ヨドバシカメラ」新宿とヨドバシカメラをテーマにしている
らしいのだが、エロいだけで面白くないぞっ、と。笑えるのかな?
 
「20世紀」神町を取材する小説家。
うおーまたも神町!飽・き・た!
本文で主人公がいみじくも自嘲するように、ただの妄想連想ゲームで
あって価値を感じない。これが笙野頼子くらいガチガチに理論武装して
くれれば面白がりようもあるのだが、全てはなんとなくなので。
作家の妄執が何処より来たるのか、それを描くのが文学じゃあないん
ですかしら。
p.s.よほどの何かが起きない限り、もうこの作家さんは読まない
ことにした。