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読書の記録

ヴァルター・メアス「キャプテン・ブルーベアの13と1/2の人生」上

キャプテン・ブルーベアの13と1/2の人生 上キャプテン・ブルーベアの13と1/2の人生 上
ヴァルター・メアス 平野 卿子

河出書房新社 2005-01-15
asin:4309204201

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 最初の記憶は、クルミの殻の中でまっぱだかのまま大海に浮かんでいたこと。ブルーベアの数奇な27年の思い出を、半分だけ見せてくれる愉快なファンタジー
 これは、子供だけに読ませるのはもったいないね。もちろん今お子様である人にも読んでもらいたいが。ちっちゃいブルーベアが、一人きりで海を漂う場面に始まり、まるでガリバー旅行記かと言いたくなるほどの奇想天外な世界が展開していく。度胆をぬかれるのは、その生物のものすごさ。
 〈だいだらぼっち〉のような「ボロッグ」や、世にも可愛く(エサまでもが可愛らしいのだ!)ロマンティックな「ヴォルパーティンの子犬」などなど、凡人にはとても思いつかぬ奇っ怪で妙ちきりんな生き物たちが目白押しなのだ。ほんわかユーモラスかと思いきや、命がけの探検や冒険、危険が待ちかまえていたりもするので気がぬけない。 ブルーベアは次にどこへいくのか、そこでどんな生き物に会うのか、楽しすぎて読み終えるのが残念なほどの面白さ。
 訳者解説によれば、著者はドイツの人気コミック作家とのこと。それも納得の怒濤のアイディアと、ムードある挿画(著者によるもの!)を堪能していただきたい1冊だ。

p.s.諸星大二郎の名作漫画夢の木の下で (Mag comics)などの目をみはるような異世界が好きな方には、ぜひぜひおすすめしたい。