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読書の記録

加藤実秋「インディゴの夜」

インディゴの夜インディゴの夜
加藤 実秋

東京創元社 2005-03-01
asin:4488017126

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 ライターの晶は変人編集者の塩谷とともに、一風変わったホストクラブ「indigo」を経営することになる。ホストクラブで巻き起こったり、持ち込まれたりする事件を晶とホストたちが鮮やかに解決する連作短編集。
 これはミステリーにはありがちなことだが、都合の良さが目立って醒めてしまう。たとえば晶がききこみをすれば、あからさまに怪しいのに皆さん簡単に彼女を信用してしまう。それはちょっとあり得ないのではないかと。そしてホストクラブを敵視しているはずの警察側も、なぜか(仲が良くないというのは見せかけで、実は馴れ合ってるのか?)晶とindigoのメンバーに甘々で、そこは違和感を感じる。
 ただ、それらの欠点を補うだけのキャラの魅力・元気良さがあった。全体として、若者の生態紹介物語でもあって、ナンパ師のあれこれだとか、ホストの手練手管であるとか、渋谷をうろつく女子高生の貞操観念だとかをいきいきとのぞき見させてくれる。ちょっぴりワイドショーとかの若者のトレンド紹介番組みたいなムードさえ、漂っている。
 本当はホストと経営側がこんなに仲良いなんてことは無いだろう。王道ホスト空也みたいな人物は探せばいるかもしれないが、謎めいたホスト憂夜みたいな人はフィクションの中だけの存在であると思う。それでも、ファンタジックな理想のホストクラブとして、本書の中だけにindigoはノリノリに存在している、そこが読み物として楽しかった。