読書日記PNU屋

読書の記録

福澤徹三「死小説」

死小説死小説
福澤 徹三

幻冬舎 2005-03
asin:4344007506

Amazonで詳しく見る


 じっとりと不安あおるホラー作品集。
 
「憎悪の転生」あ、これは好みではないなあ…じっとりストレスフルなお話だ。ホラーらしいと言えば、展開といいオチといい“らしい”のだが。
 
「屍の宿」実話怪談などではたまにあるオチだったりもするけれど、小気味よくて楽しい一品。
 
「黒い子供」怪奇現象は確かに起こるのであるが、謎は不明のまま。超常現象そのものより、周りのごく普通の人間達の方が恐ろしい、そんなお話なのかもしれない。
 
「夜伽」幼き日の甘くせつなく畏ろしい思い出が、歳を経て奇怪な変容を見せる。これは怖い!同じようないけない思い出を持つ男性には身震いする恐怖があるのでは、ないだろうか。これも女が怖いな。
 
降神」これはね…2004年夏に出された某作品と骨子が同じ…。でも本書の中では、「夜伽」に勝るとも劣らぬ恐怖度の作品である。あまりに某作(ネタバレ防止のためタイトルは伏せる)と展開が同じであって、そこが読者としては幻滅。しかしそちらの某長編よりも短編である本作品の方がテンポよくまとまっており、ゆえにあちらよりも楽しめる作りとなっていて、そこは良かった。
 
 全体として、男による男のためのホラーという印象。女性が読んで怖ぁ、と思う作品は少ないのではないか。湿度の高い、日本的なホラーが好きであれば一読して損はないと思われる。