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読書の記録

長嶋有「泣かない女はいない」

泣かない女はいない泣かない女はいない
長嶋 有

河出書房新社 2005-03-15
asin:4309017053

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 短編2編および、掌編1編を収録。
 
「泣かない女はいない」睦美は同じ会社の桶川さんになんとなく好感をいだく。 睦美のこのなんというのか、大人になりきれぬ夢見るぼんやりさ加減にはすごく共感してしまった。たとえば通勤路途中にあるキン肉マンの落書き。いくらそれが上手かろうと、ふつうの大人はそんなものしげしげとは見ないものである。ところが睦美は、落書きを
毎日確認する上に、それらを心のお気に入りスポットとして見なしているのである。どこかピュアでおバカな子供心を残した人でないと、こんな行動はしないものであろう。
 万事そんな感じで、マジメなくせに他人に自分がどう思われるか気にしすぎる、アンバランスなヒロイン・睦美の感性により、何気なく見過ごされてしまうような日常の些細なキラキラしたものが次々書きとめられてゆく、そこが楽しい。
 
「センスなし」夫と別居中の保子は、ひとりになったことを機に自分のヒストリーを見つめ直す。これは静かな女の怒りが伝わってきて、女性としては共感出来るけれど、男性は身につまされて恐ろしいのではないだろうか。好きなんだけど恥ずかしいモノというのは読者の共感を呼びまくりそう。
 
「2人のデート」書き下ろし掌編である。なんと、カヴァー裏に2pにわたって書かれているのである。図書館本でカヴァーのり付けされてる人は読めないじゃないよね。買わなきゃ読めないということは、販売促進運動の一環としてのアイディアなのかしら。
お話はごくたわいないデート風景だが、男が今時いるのかよというほどウブで可愛らしい。あのベストセラー「電車男電車男 (新潮文庫)のように、こういうさえないモテない君を自分好みに染めていくのがよろしいんじゃないかと思うよ>彼女さん。