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読書の記録

川上弘美「どこから行っても遠い町」

どこから行っても遠い町どこから行っても遠い町
川上 弘美

新潮社 2008-11
asin:4104412058

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 平凡に見える人間にも、ドラマがある。とある街に暮らす人々の姿を描く連作集。
 うーん、巧いし引き込まれるところもあるのだが、ちょっと飽きた。
 狭い街の住人が次々主人公になってゆくから、気になっていた登場人物にひょっこり再会できたりする喜びもあるけれど、それと物語の面白さはまた別だ。
 私が本書を楽しめなかったのは、不倫率の高さもある。不倫は小説やドラマの人気テーマなので、あるのはいたしかたないが、それにしても目新しくもない不倫模様が展開されるとうんざりしてしまう。私の考え方が古いだけで、世間ではこんなのフツーなのか?だとしたら世も末だな。
 そして、ある魚屋夫婦で輪が閉じられているものの、各人の(主に)恋愛模様が次々開帳されていくだけでカタルシスがなく、閉塞感を覚える物語だった。市井の人々のありふれた人生に、興味が持てない。私が本書に抱いた感想を一言で表すなら、「蛇は穴に入る」の主人公の言葉を借りて『しり切れとんぼ』。物語の並びに何か作者のこだわりや企みがあったのかもしれないが、私には理解できず。